終活で最低限やっておきべきこと

終活全般

 年齢も50歳を過ぎてくると、ご自身の今後の人生や、亡くなった後に遺されるご家族のことなど、何かと不安が多くなると思います。

そこで、やっておきたいのが、最近ブームの「終活」です。
しかし、「終活」という言葉は漠然と知っていても、「終活とは何をどう始めたらいいのか?」正確に内容を把握している人は多くないと思います。

「終活」としてやらなくてはならないことは幅広く多岐にわたり、人それぞれ千差万別です。
全てを一斉に行おうとしてもやることが多過ぎて、結局、中途半端で終わってしまう人も少なくありません。
そこで今回は、「終活として最低限やっておくべきこと」について解説したいと思います。

 「終活」とは、「自らの人生の終焉に向かうために行う活動」のことを言い、ご自分が亡くなった際の葬儀やお墓の準備、遺言書作成・生前整理などを行うことで、ご自分が他界した後に遺された家族の負担になりそうなことを、生前に積極的に準備して決めておく活動のことを言います。

 「終活」を行うことで、残された人生への不安や悩みなど、自分の心の中にある全てのものを整理することで残りの人生をより自分らしく生きていくことができます。

終活ですべきことには決まったルールはなく、人により内容は様々ですが、葬儀やお墓の準備、相続問題の解決、そのための遺言書の作成、生前整理しておくことや介護と医療について決めておくなど多岐にわたるため、どれから始めていいかの分からず、結局、『やろうと思っているがやらずじまい』になる方が結構いらっしゃいます。

 しかし、「終活」を行わないまま突然お亡くなりになったり、病気や事故で意思の疎通が取れなくなると、ご家族はどうしていいのか分からず、大きな負担がかかり困窮してしまいます。
そうならないために、「終活」として、下記のことは最低限やっておきたいものです。

「エンディングノートを作成する」
 エンディングノートとは、自分が亡くなった後や、病気などにより意思疎通が困難になったときに備え、家族にかかる負担を減らすために、事前に家族やまわりの人々にご自身の希望や想いを整理し伝えたいことを書き留めておくノートや手紙のことをいいます。
 
 エンディングノートを書くことで、自分が伝えたい思いや終活ですべきこと、終活として早めにしておかなければならないことなどが自然に分かってきます。
エンディングノートに書かなければならない項目は決められているわけではございませんが、自分の老後や死後に家族にかかる負担を減らすことが目的ですので、あなた自身が必要だと思うことや気がかりなことなどを記載します。
 なお、エンディングノートに正式な形式はありませんので、市販のノートでもいいですし、WordやExcelを使って作成するのもいいでしょう。

エンディングノートに書いておきたい内容は、主に下記になります。

【エンディングノートで書いておくべきこと】
1、ご自身について
・名前、生年月日、住所、本籍地、血液型、住民票コード、マイナンバー、基礎年金番号、保有している資格、学歴、職歴、結婚、夫婦の記念日、出生地、幼少期から各年代の思い出、趣味や特技ほか

2、関係する人物の連絡先
・家族、兄弟、親戚、養子、家系図、友人、知人、職場関係者、法的関係の相談者など

3、契約関係
・水道・ガス・電気などの契約情報、電話や携帯の契約内容、インターネット関連(SNSやWebサービスを利用している方は、会員情報、退会など必要な会員になっているもののアカウント情報など)など

4、財産について
・預貯金(口座番号)、クレジットカード情報、各種加入保険、有価証券や金融資産、不動産、借入金やローン、骨董品など

5、介護や医療について
・常用している薬、アレルギーについて、希望する医療・介護施設、延命措置、臓器提供、検体について、介護や治療方針と決定者指定、後見人の希望(財産管理などを任せられる人)など

6、葬儀について
・宗派や宗教、戒名や法名、希望の葬儀の規模(一般葬、家族葬、一日葬など)、葬儀の生前予約している場合は契約内容、希望する葬儀業者や会場、遺影写真、参列者リスト、喪主に頼みたいことなど

7、お墓について
・希望の墓地、埋葬方法、墓地の継承者について、供養方法やお供え物など

8、その他
遺言書の有無、それらの保管場所、形見分け、ペットについて、家族や友人に対してのメッセージ(感謝の言葉や最後に伝えたいこと)など
※家族へのメッセージなどは、写真や動画で残すのもいいでしょう。

 なお、エンディングノートには個人情報や生前には知られたくない情報など、かなりデリケートな内容や個人情報が含まれます。そのため、取り扱いには細心の注意をはらい保管場所は金庫などにしておきましょう。 

 ただし、エンディングノートの存在自体誰も知らないと無意味になってしましますので、保管場所は信頼できる親しい人に知らせておくことが大切です。
 また、基本的に他の方に見られる(誰が読むか分からない)ことが前提ですので、内容はわかりやすく書くことはもちろんです。

「遺言書を作成する」
 エンディングノートの作成でご自身の資産のことなど確認し把握しましたら、その流れで、次に「遺言書」を作成しましょう。

 あなたがお亡くなりになられた後、愛する大切なご家族同士が遺産などの相続問題で争わないためにも、遺言書を作成し残しておくことは、終活をすすめる上でやっておかなければならない大切なことの一つです。

 また、遺言書の作成で重要なことは、遺言書は、ご本人の「身体と心(精神状態)が元気なとき」で、「遺言能力」がなければ、遺言書を作成することができませんので、もし、不慮の事故に遭ってしまったり、認知症になったり判断能力が低下してきたりすると、遺言書を作成すること自体が不可能となってしまうのです。

そうならないためにも、遺言書の作成は、ご自身がまだ元気なうちに出来るだけ早めに作成することが大切です。

【遺言書の作成】
 遺言書は、自分の財産のために遺された家族が争うことのないように、誰がどのような資産を相続するのかを把握し、ご家族で円満に分割するために必要なものです。
なお、遺言書は決まった形式で書かなければ法的に無効になってしまいますので、法律で定められた形式で正確に作成することが大切です。

 遺言書の作成方法は、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあります。

「自筆証書遺言」
自筆遺言書とは、自筆で遺言書が作成できる最も簡単な方法で、「その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法968条に規定された遺言方法の一つです。
作成するためには、遺言能力は必要となります。
※2019年1月13日に制度が改正され、「遺言書に添付する『財産目録』は、パソコンなどの自筆(手書き)でないもので作成できる。」ことになりました。
 
 自筆証書遺言書のメリットは、ご自身が手書きで簡単に作成できるので、費用はかからず手軽であるということろですが、半面、遺族は、遺言書としての正しい内容になっているかの判断を仰ぐために、家庭裁判所の「検認」という手続きを受ける必要があったり、法律で定められた要点が欠けてある場合は無効になるなどリスクがあります。

「公正証書遺言」
 公正証書遺言は、遺言者が2人以上の証人と一緒に公証役場へ行き、証人立会いのもとで、公証人が口頭で遺言の内容を聞き取り遺言書を作成してもらう遺言のことです。
他の遺言形式と違い無効になりにくく、公正役場で作成し管理されるため偽造の心配もありません。
遺言書の原本は公証役場に、正本と謄本は本人の手元に保管しますので、紛失の心配ありません。

 公正証書遺言書は、無効になりにくく紛失の心配もなく、家庭裁判所の検認も不要というところがメリットですが、作成の際に手数料がかかることと、遺言書の存在と内容を公証人や証人に知られてしまいますので、誰にも知られたくない秘密があるなら、自筆証書遺言や秘密証書遺言にしたほうがいいでしょう。

「秘密証書遺言」

 秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を誰にも知られずに秘密にしたまま、存在のみを公証人と証人に証明してもらう遺言書で、遺言者が自分で作成します。
本人以外の相続人、公証人や証人は内容を見ることができないので、遺言内容を「秘密」にすることができる遺言書の形式です。

 自筆証書遺言との違いは、署名だけを自署し押印さえすれば、遺言書の本文はパソコンを使ったり代筆してもらったりしても問題のないところです。
遺言者が封筒などに入れ遺言書自体を印鑑で封じた遺言書を持って、2人以上の証人を連れ公証役場に行き、証人とともに公証人の前で署名押印することで、秘密証書遺言の手続きは完了となり、遺言書は遺言者自身で保管します。

 秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしておくことが出来ることと、遺言者の死後に、遺言書が発見されないケースを防ぐことができることがメリットですが、遺言の「内容」を公証人が確認をしないので、遺言としての要件が欠けており遺言が無効となってしまうリスクがあります。
 また、自筆証書遺言と同様に、相続発生後は家庭裁判所にて検認の手続を受けなければなりません。

 遺言書としての確実性を求めたいなら、公正証書遺言がオススメですが、誰にも知られたくない秘密があるなら、自筆証書遺言にしたほうがいいでしょう。

 なお、遺言書を作成される際は、遺言書の内容の不備などによりご家族が辛い思いをしないためにも、法律の専門家である弁護士の助言をもらいながら遺言書を作成し、可能なら遺言の執行まで準備しておくとが大切です。
 
 他にも終活として、葬儀やお墓の準備、生前整理などはやっておきたいことですが、あれもこれもとやろうとすると、途中で疲れてしまい中途半端になる可能性がありますので、まずは終活として、本日ご紹介した「エンディングノートの作成」と「遺言書の作成」は最低限おこなってください。

 本日は、「終活として最低限しておきたいこと」について解説させていただきました。
あなたが終活を始めようとお考えの際に、ご参考にしていただけると幸いです。
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