遺言・相続について

終活の一環として、相続問題での肉親同士のトラブルを避けるために「遺言書」を的確に残すことは大切はことの一つです。

もし「遺言書」が無い場合は、相続財産(現金・預金や、土地・家屋の評価額、株券、貴金属・骨董品ほかなど)は、法定相続人の順位によって配分されます。

その順位は、配偶者と、配偶者以外では、子供、親、兄弟姉妹の優先順となり、それぞれ法律で配分が決められておりますが、法定相続人の中に連絡がとれない人がいると、遺産分割を進めることができなくなり、相続人の負担になってしまいます。

さらに、法定相続人は複数人いるケースが多く、肉親同士で相続トラブルが起こることも少なくないようです。

また、相続財産が多額となり基礎控除額を超えてしまうと、相続税が大きな負担になることも注意したいところです。
財産が自宅しかない場合でも、不動産は分割が難しいためにトラブルの種となりえます。

そのように、ご自分の死後に、愛するご家族同士が遺産のことなどで争わないように、自分の死んだあとの相続財産の処分(配分の仕方)やその他のことについて「遺言書」を作成しておくことがとても重要です。

しかし、遺言書は、書き方が法律で決まっており、せっかく作成した遺言書が法律的に不完全な形式ですと、遺言書として認められなくなり遺言自体が執行されないなどトラブルを招きかねませんので、ここで遺言書について詳しくご説明させていただきます。

遺言書の作成方法は3つあります

遺言方法は、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」そして「秘密証書遺言」の3つの方法となり、それぞれ遺言の方法(遺言書の書き方など)が変わってきます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言書とは、その名の通り、自分だけで遺言書が作成できる最も簡単な方法で、「その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法968条に規定された遺言方法の一つです。


従来は全文手書きという規定がありましたが、2019年1月13日に制度が改正され、「遺言書に添付する『財産目録』は、パソコンなどの自筆(手書き)でないもので作成できる。」ことになりました。

自筆証書遺言書は、手書きで作成できるので費用はかからないため、とても手軽でメリットがある半面、遺言書を見つけた遺族は、遺言書としての体裁を保っているかの判断を仰ぐために家庭裁判所の「検認」を受ける必要があったり、法律で定められた要式が欠けてある場合無効になるなどリスクがあります。

遺言書に使用する用紙は、一般的には便せんを使用しますが、レポート用紙などに記載しても問題ありません。但し、自筆の筆記用具は、消えないように鉛筆以外の万年筆やボールペンを使うようにしましょう。

「作成のポイント」

  • 作成年月日をきちんと書く
  • 遺言は筆記具を使って(財産目録以外は)自分で手書きする
  • 遺言書に添付する『財産目録』は、パソコンなどの自筆(手書き)でないもので作成できる。
  • 上記3の添付する書類においては、各頁に署名して押印をしなければならない
  • 自筆証書遺言の押印は認印でも有効ですが、印鑑登録証明書に登録してある実印を押印した方がいいです。
  • 拇印は無効ではないが、可能な限り印鑑を押す
  • 録音・録画による遺言は無効
  • 遺言書に割印は不要

遺言書を2通以上作成することもできますが、遺言の内容が矛盾していた場合、前の遺言は後の遺言により取り消されることになり、後の遺言の内容が有効となります。
矛盾する部分以外については前の遺言も有効になりますので、遺言全体を取り消したい場合には前の遺言を破棄しておかなければなりません。

自筆証書遺言は、相続発生後に、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
相続発生後は検認手続のため、相続人または代理人が各種書類を用意して裁判所へ行かなければなりませんので、遺言書を作成するときは簡単で費用がかからなくても、残されたご家族にとっては、相続発生後の手続きは煩雑です。

自筆証書遺言は、遺言書を紛失したり、相続予定者などによって隠匿や変造されたりするリスクが伴いました。
また、相続発生後は、家庭裁判所で検認を受ける必要があることと、法律で定められた要式が欠けてある場合は、遺言自体が無効になるなどのリスクがありました。

そこで、そのリスクを解消するために、「法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」といいます)」が2020年7月10日から施行され、一定の様式で作成された自筆証書遺言の遺言書を、法務局が遺言者等に代わって保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」という制度が創設されました。

この「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで、下記のようなメリットが得られます。

1、遺言書の保管が安全になる
自筆証書遺言(自分で書いて残す遺言書)を公的機関である法務局(遺言書保管所)に預けることが可能となった(遺言書保管法4条1項)ので、遺言書作成後の紛失や、相続人等による破棄・隠匿を回避することができます
※預けることができる遺言書は自筆証書遺言のみで、公正証書遺言や秘密証書遺言は保管の対象ではございません。

※【遺言書保管法4条1項】
遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができる。

2、法律(遺言書)の専門家が遺言書の内容を確認 ※検認手続きが不要となります
遺言書保管所(法務局)に遺言書の保管の申請をすると、遺言書保管官(遺言書保管法3条)が、民法が規定している自筆証書遺言の方式(民法968条)のとおりに遺言書が書かれているかを確認してくれますので、書式(方式)の不備による遺言の無効を回避することができます。

また、自筆証書遺言書は、原則として家庭裁判所による「検認」が必要でありましたが、この制度を利用することで、保管時に遺言書保管官が内容の確認を行っているため検認は不要となり、相続実行時の負担軽減が期待されます。

※【遺言書保管法3条(遺言書保管官)】
遺言書保管所における事務は、遺言書保管官(遺言書保管所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が取り扱う。

3、遺言書の信憑性が高くなる
遺言書の保管申請をする際に、申請人が遺言者本人であるのかを確認するために、遺言書保管官より、運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認ができる書類の提示や住民票の提出、もしくは申請人に説明を求めることにより本人確認を行うため、「遺言書は本人が作成したものである」という信憑性が高くなるため、遺言実行の際の真贋争いを回避することができます。

※【遺言書保管法5条(遺言書保管官による本人確認)】
遺言書保管官は、前条第1項の申請があった場合において、申請人に対し、法務省令で定めるところにより、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため、当該申請人を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す書類の提示若しくは提出又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。

なお、「自筆証書遺言書保管制度」を利用する際は、下記に点に注意が必要です。
1、手数料がかかります
申請には手数料3,900円が必要です。なお、その後の保管年数による追加納付は発生しません。

2、申請は本人のみ、
遺言書保管所では本人確認を行いますので、遺言者が出頭しなくてはなりませんので、代理申請はできません。

3、遺言書保管所は自由に選べません
保管申請は、「遺言者の住所地」「遺言者の本籍地」「遺言者の所有する不動産の所在地」のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)の遺言書保管官に対して行わなければなりませんので、遺言者の自宅や入院先などを保管場所として選ぶことはできません。

なお、遺言者の死亡届が提出されても、遺言書を遺言書保管所が保管していることを、相続人や受遺者、遺言執行者等に自動的通知されるシステムにはなっていないので、遺言書保管所に遺言書を預けていることを相続人等に知られせておかないと、遺言書自体が無きものとして、相続人の協議で遺産分割されてしまう危険性があります。

死亡後に確実に遺言の内容が実行されるためには、遺言書が遺言書保管所に保管した時に遺言書保管官から「保管証」が交付されますので、受遺者や遺言執行者に渡しておきましょう。
※保管証を渡す際は、渡す前に写しを取り、必ず写しはご自身で保管しておくことをおススメします。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が証人2人以上と一緒に公証役場へ行き、証人立会いのもと、公証人へ口頭で遺言の内容を伝え、公証人に遺言書を作成してもらう遺言のことです。

自筆証書遺言秘密証書遺言と違い無効になりにくく、公正役場で作成し管理されるため偽造の心配もありません。

相続手続きをする際は、家庭裁判所の検認は不要となります。

公正証書遺言書を作成するときには、公証人と証人(2名以上)への手数料が必要となります。
原本は公証役場に、正本と謄本は本人の手元に保管しますので、紛失の心配も必要ありません。

遺言者には謄本を渡されます。万が一謄本を失くしてしまっても、原本を公証人役場で保管するので、謄本の再発行を受けることができます。

公証人役場に保管された公正証書遺言書は、全国約300か所ある公証役場で「遺言検索システム」を利用して検索照会し、遺言書があることがわかれば、保管している公証役場に請求して謄本を発行してもらうことが可能です。

「遺言者が生存している場合」
・遺言者本人、もしくは代理人しか検索・閲覧できません。

「遺言者が死亡している場合」
・相続人、受遺者及び遺言執行者などの利害関係者が検索・閲覧できます。

遺言書としての確実性を求めたいなら、公正証書遺言がオススメですが、証人が必要なため遺言の存在と内容を公証人や証人に知られてしまうので、誰にも知られたくない秘密があるなら、自筆証書遺言秘密証書遺言にしたほうがいいでしょう。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を誰にも知られたくないという場合に使われています。
遺言者が自分で遺言書を作成します。

遺言者が遺言書を作成してから、公証人と証人2人以上に作成した遺言書が秘密証書遺言であるということを確認し、証明してもらう必要があります。

秘密証書遺言は、相続人・公証人・証人を含め、本人以外は内容を一切見ることができないので、誰にも遺言の内容を知られることなく、遺言内容を「秘密」にしたまま遺言書を作成することができるとともに、遺言書の存在を証明できるため、遺言者の死後に、遺言書が発見されないケースを防ぐことができます。

自筆証書遺言との違いは、署名だけを自署し押印さえすれば、遺言書の本文はパソコンを使ったり代筆してもらったりしても問題のないところです。
遺言者が遺言書を封筒などに入れ遺言書自体を封じ、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印をする必要があります。

2人以上の証人を連れ作成した遺言書を持って、公証役場に行きます。
遺言者は、公証人と証人の前で封筒の中身が自分の遺言書である旨と、氏名および住所を告げます。

その後、公証人がその封紙上に提出日と遺言者自身の遺言書である旨の申述を記載し、遺言者は証人と共に署名押印します。
署名押印が終わったら、秘密証書遺言の手続きは完了となり、遺言書は遺言者自身で保管します。

秘密証書遺言は、公証人が遺言の「内容」まで確認をするわけではないので、遺言としての要件が欠けており無効となってしまうリスクがあります。

また、自筆証書遺言と同じように、相続発生後は家庭裁判所に届け出て検認手続を受けなければなりません。

手続きが煩雑な割に公正証書遺言のような確実性がないので、遺言の内容を秘密にしたい場合以外は、確実性の高く死後に簡易裁判所の検認の必要がいらない公正証書遺言を選択したほうがいいのではないでしょうか。

遺言書作成には、専門家に相談するのが賢明です

遺言書作成といえば、誰でも一番先に頭に浮かぶのが弁護士ではないでしょうか。

遺言書作成を弁護士に依頼するメリットは、法的なトラブル無いように対応してくれるということです。遺言書の内容をどうすればトラブルに発展しないかなど、法律の専門家として適切にアドバイスしてくれます。

また、遺言書の作成を弁護士に依頼することで、ご家族にきちんと相続できるという安心感が得られます。
逆に弁護士に依頼するデメリットは、他の専門家(司法書士や行政書士)に比べて、作成費用が高くなるという点でしょうか。

そこで、気になる費用についてご説明させていただきます。

弁護士の費用は、遺言書が定型の文章か、それとも個人の状況に合わせた非定型の文章にするなど書式の複雑さや、遺す財産の多さ等によって変わってきます。

定型遺言書の場合の弁護士費用

一般的な相続の場合には,遺言書は定型的内容になる場合がほとんどです。
手数料:100,000円(税別)

非定型遺言の場合の弁護士費用

非定型遺言の場合は,相続財産の価値によって手数料が異なります。

相続財産の価額 手数料
300万円以下の場合 相続財産の4%相当額(税別)
ただし,最低200,000円(税別)
300万円を超え
3000万円以下の場合
相続財産の2%相当額+6万円(税別)
3000万円を超え
3億円以下の場合
相続財産の1%相当額+36万円(税別)
3億円を超える場合 相続財産の0.6%相当額+156万円(税別)

その他の費用

上記弁護士費用のほかに,公正証書で遺言を作成する場合、公正証書作成費用や、資産・負債などの調査や、特殊な法令・裁判例の調査が必要となる場合などは、弁護士費用(手数料)がかかる場合があります。

資産・負債の調査費用 100,000円(税別)
書類取寄せ手数料 5,000円
公正証書の作成手数料 30,000円(税別)
日当 公証役場等への出頭・出張1回につき、20,000円〜40,000円

上記の費用のほかに,遺言作成のために実費がかかり、ご依頼者さまにご負担いただくことになります。
実費としては,公証役場手数料交通費郵送費書類取り寄せ等の印紙代などが必要となります。

公証役場手数料について

公証役場に支払う手数料は遺産の総額によって異なります。
おおまかには5,000万円程度の遺産があれば7万〜9万程度とされています。

目的財産の価額 手続手数料(実費)
100万円以下の場合 5,000円
200万円以下の場合 7,000円
500万円以下の場合 11,000円
1,000万円以下の場合 17,000円
3,000万円以下の場合 23,000円
5,000万円以下の場合 29,000円
1億円以下の場合 43,000円
1億円を超え
3億円以下の部分
43,000円に,1億円を超える部分について
5000万円ごとに,13,000円を加算
3億円を超え
10億円以下の部分
95,000円に,3億円を超える部分について
5000万円ごとに,11,000円を加算
10億円を超える部分 249,000円に,10億円を超える部分について
5000万円ごとに,8,000円を加算

※公証役場手数料について詳しくは,公証役場の HP をご覧ください。

弁護士事務所というと、何となく敷居が高く気軽に相談しにくいと感じている方が多いと思います。

しかし、遺言書を作成する上で一番避けなければいけないのが、ご家族に対して自分の意思が正確に伝わらなかったり、遺言書の内容の不備などにより、遺言が執行されなかったりといったことです。

内容の不備などによりご家族が辛い思いをしないためにも、法律の専門家である弁護士の助言をもらい遺言書作成し、可能なら遺言の執行まで準備しておくと安心です。