自然葬のメリットとデメリットについて、その1(樹木葬のメリット・デメリット)

墓地・霊園

 従来より、お墓は『先祖代々、ご家族が一緒に眠る場所』とされてきましたが、近年、少子化が進む日本において、お墓の継承者がいない人や、お墓のことで遺されるご家族に負担を掛けたくないという人が急増している背景から、お墓を持たずにご遺骨を自然に還す「自然葬」を利用する人が増えております。

 今回は、その「自然葬」のメリットとデメリットについて、2回に分けて解説させていただきます。

「自然葬」とは、ご遺骨を墓石を建てた墓地などに納めるのではなく、海や山などの自然にご遺体やご遺骨を還す葬送の方法で、広い考え方ですと、土葬や水葬、風葬、鳥葬などの、自然に回帰するような葬送全般も含まれます。

 母なる自然の大きな循環の中に帰りたいという故人の想いを叶えるためと、墓石や墓標などの人工物や造成された墓地をこれ以上増やさずに、里山などの自然を保護しようとする観点から、自然葬が生まれたと言われております。

 自然葬の形式は多種多様ですが、代表的なものとしては、墓石の代わりに樹木を墓標とする「樹木葬(じゅもくそう)」と、ご遺骨を海洋や山、空などに撒く「散骨葬(さんこつそう)」です。

 各々でメリットとデメリットは異なりますので、個別にご紹介したいと思います。

「樹木葬」
 樹木葬とは、墓石を置かず、墓石の代わりに樹木や花を墓標(シンボル)として、その下にご遺骨を埋葬するお墓のことで、樹木墓地(じゅもくぼち)や、樹林墓地(じゅりんぼち)とも呼ばれており、死後は自然に還り静かに眠ることができるとして、公共・民間を問わず自然志向の方の間で急速な広がりを見せております。
自然に配慮して樹木を墓標にする考え方は「自然葬」と言えますが、分類としては従来の「お墓」と同じ取り扱いとなっています。

「樹木葬」のメリットとして挙げられる点は下記になります。

メリット1、お墓の負担が少ない
 基本的に永代供養がほとんどなので、お墓の承継の心配は必要ありません。
また、お墓の掃除や生花を供えて線香に火を灯したりなど、供養やお墓の管理をする必要もありませんので、遺されたご家族のお墓の負担は大幅に軽減されます。

メリット2、宗派・宗旨は問われません
 樹木葬の場合、ほとんどのところが宗旨・宗派を問わず利用することができます。

メリット3、費用が抑えられる
 一般的なお墓と費用を比べると、墓石を購入しないため費用を抑えることができます。

メリット4、お墓参りができます
 散骨葬の場合は、ご遺骨を散骨してしまうため、お墓参りをしたい場合の目印となる墓標がありませんが、樹木葬は墓石の代わりに樹木を墓標としますので、特定の場所にお参りすることが可能です。

メリット5、自然回帰の想いが叶います
 石材を用いたお墓ではなく樹木の下に埋葬するので、「自然に還る」「自然によりそう」といった自然回帰の想いを叶えることが可能です。

メリット6、環境に優しい
 一般的なお墓を建てる場合、墓石を作るためには、岩山から岩石を切り出さなければなりません。
樹木葬には、シンボルツリーとなる樹木が不可欠となります。新しく樹木葬墓地を作るためには、樹木を植えたり、既存の「墓地・霊園」の環境保全に力を入れる必要があります。
樹木葬が広まるにつれて、専用の樹木が増えていくことになりますので、他のお墓よりもはるかに環境に優しいのです。

逆に、「樹木葬」のデメリットとして挙げられるのは下記のような点になります。

デメリット1、ご遺骨が取り出せない
 樹木葬の場合、骨壷で埋葬しないものは、一度、埋葬してしまう後でご遺骨を取りだすことが不可能となります。

デメリット2、お供え物や線香が置けない場合がある
 樹木葬を行っている墓所の管理者によっては、お供え物や線香を置けない場合がありますので、事前に確認が必要です。

デメリット3、交通の便が悪いことがある
 樹木葬の中でも、「都市型」や「公園型」などは、比較的アクセス面が良いところもありますが、「里山型」は自然豊かな場所にあることが多いので、どうしても霊園や墓地へのアクセスが悪いことも多いようです。

デメリット4、親族の理解が得られない
 樹木葬の歴史はまだまだ浅く認知度も低いため、保守的な親族などからの理解が得られにくいこともあります。

デメリット5、月日とともにイメージが変わる
 樹木には樹齢がありますので、10年・20年後まで希望通りのイメージのままという訳にいかない場合があります。
また、山深い場所に埋葬すると、年月とともに草木が生い茂り、墓標が分かりにくいため参拝や掃除も大変になる可能性もありますので、注意が必要です。

 樹木葬は、基本的に一度埋葬されると、その後ご遺骨を移動したり変更することは困難な場合がほとんどですので、もし、樹木葬を検討される場合は、埋葬後に後悔しないように、ご家族や親族を交えてゆっくし相談しながらお決めになることをおススメします。

 今回は、代表的な自然葬の一つである「樹木葬」のメリットとデメリットについて解説させていただきました。
皆さまが、終活の一環としてお墓のことを検討される際の、ご参考にしていただけると幸いです。

 次回は、もう一つの代表的な自然葬である「散骨葬」のメリットとデメリットについて解説したいと思います。
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