エンディングノートと遺言書の違いについて

終活全般

 「終活」の大切なツールとして、自分の人生の終焉と希望・想いを書き残す手紙(手記)「エンディングノート」は大切なものです。

 また、遺されたご家族が財産問題などで争わないように、終活の一環として生前に準備しておきたいのが「遺言書」です。

「エンディングノート」と「遺言書」は、どちらも、遺されるご家族のために書き残しておく必要があり、終活には無くてはならないもので、ご家族のために書き残すという点では似ておりますが、その役割や内容は全く違うものです。

そこで今回は、「エンディングノートと遺言書の違い」について解説したいともいます。

「エンディングノート」
 「エンディングノート」とは、自分が亡くなった後や、病気などにより意思疎通が困難になったときに備え家族にかかる負担を減らすために、まだ健康なうちにご自身の希望や想いを整理し、事前に家族やまわりの人々伝えたいことを書き留めておくノートや手紙のことをいいます。

 エンディングノートには正式な形式はありませんので、市販のノートでもいいですし、WordやExcelを使って作成するのもいいでしょう。

また、エンディングノートに書かなければならない項目は決められているわけではございませんが、主に下記の内容について書き残しておくといいでしょう。

●本人情報
名前、生年月日、住所、本籍地、血液型、住民票コード、マイナンバー、基礎年金番号など

●プロフィール
・学歴、職歴、結婚、夫婦の記念日、出生地、特技や趣味、人生の経緯など

●関係する人物の連絡先
・家族、兄弟、親戚、養子、家系図、友人、知人、職場関係者など

●契約関係
・電話やスマートフォンの契約内容、水道・ガス・電気などの契約情報、インターネット関連など
※SNSやWebサービスを利用している方は、会員・アカウント情報など

●財産について
・預貯金(口座番号)、公共料金などの自動引き落とし情報、クレジットカード情報、各種加入保険、有価証券や金融資産、不動産、借入金やローン、骨董品など

●介護や医療について
・希望する医療や介護施設、費用、後見人の希望(財産管理などを任せられる人)、延命措置、臓器提供、検体について、介護や治療方針と決定者指定、常用している薬、アレルギーについてなど

●葬儀について
・宗教や宗派、戒名や法名、希望の葬儀の規模(一般葬、家族葬、一日葬など)、葬儀業者や会場、互助会など、遺影写真、参列者リスト、喪主に頼みたいことなど)

●お墓について
・埋葬希望の墓地、埋葬方法、墓地の継承者について、手入れやお供え物など

●遺言書について
・遺言書の有無、それらの保管場所、形見分けなど

●ペットについて
・ペットを飼われている方は、年齢、ペットの食べ物の好み、誰に飼って欲しいか、行きつけのペットショップ、かかりつけ医など

●メッセージ
・ご家族や友人に対し、感謝の言葉や最後に伝えたいことなど

 なお、エンディングノートには、資産情報などかなり機密性の高い情報も記載しますので、第三者に見られないよう、保管する場所は金庫など安全なところにしておきましょう。
ただし、エンディングノートの存在自体誰も知らないと無意味になってしましますので、エンディングノートの存在と保管場所は信頼できる親しい人に知らせておくことが大切です。

 また、エンディングノートを書き残す目的としては、死後にご家族が困らないようにすることが大切ですので、ご家族にとってどのようなことが書き残して欲しい内容なのか、ご家族とじっくり相談しながら、その希望を基にエンディングノートを作成するといいでしょう。


「遺言書」
「遺言書」とは、死後に相続財産をどのように分けるのか内容を明記したものです。
遺言書で相続財産の分配方法についてご自身の意思を表示をしておくことで、相続財産を分配したい人に財産を譲ることができます。

遺言書は、エンディングノートと違い法的に決まった書式で作成しないと遺言書自体が無効になることがありますので注意が必要です。

 もし、遺言書が無い場合や、遺言書があっても一部の財産の遺産の分割方法しか書かれていない場合などは、相続財産の分け方について相続人全員での話し合いによって決めることになりますが、話し合いで決まらない場合は、遺産分割は法律で定められている法定相続分の優先順で分割されことになります。

遺言書でできること(遺言書の効力)は下記になります。
1、誰に何をどれくらい渡すのか指定できる
2、相続人から相続する権利を剥奪できる
3、遺言執行者を指定することができる
4、隠し子を認知することが可能です
5、保険金の受取人を変更することができる

なお、遺言書の形式は下記の3種類になります。

「自筆証書遺言」
 自筆証書遺言書は、自筆で遺言書が作成できる最も簡単な方法で、「その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法968条に規定された遺言方法の一つです。
遺言能力は必要なので、作成する方の年齢が15歳以上であることが必要です。
※2019年1月13日に制度が改正され、「遺言書に添付する『財産目録』は、パソコンなどの自筆(手書き)でないもので作成できる。」ことになりました。

 自筆証書遺言書は、ご自身で手書きで簡単に作成できるので、費用もかからず手軽に作成することができます。

 しかし従来は、「法律で定められた要点が欠けてある場合は遺言自体が無効になる」点が自筆証書遺言書のデメリットでしたが、2020年7月10日から施行された「自筆証書遺言書保管制度」を利用することにより、遺言書保管官が遺言書の確認をしてくれるので、書式(方式)の不備による遺言の無効を回避できるようになりました。

また、自筆証書遺言書は、相続発生後に家庭裁判所による「検認」が必要でありましたが、この制度を利用することで検認も不要となりました。

「公正証書遺言」
 公正証書遺言は、遺言者が2人以上の証人と一緒に公証役場へ行き、証人立会いのもとで、公証人が口頭で遺言の内容を聞き取り遺言書を作成してもらう遺言のことです。
他の遺言形式と違い、公正役場で作成し管理されるため偽造の心配もありません。

相続手続きをする際は、家庭裁判所の検認は不要となり、遺言者が亡くなりましたら、公証役場で遺言書の内容を確認し、相続手続きをおこないます。
遺言書の原本は公証役場に、正本と謄本は本人の手元に保管しますので、紛失の心配も必要ありません。

 なお、公正証書遺言を作成の際は、公証人への手数料と証人への手数料が必要となります。

「秘密証書遺言」
 秘密証書遺言は、遺言者が遺言内容を誰にも知られずに秘密にしたまま、存在のみを公証人と証人に証明してもらう遺言書で、遺言者が自分で作成します。
本人以外の相続人、公証人や証人は内容を見ることができないので、遺言内容を「秘密」にすることができる遺言書の形式です。 

 自筆証書遺言との違いは、署名だけを自署し押印さえすれば、遺言書の本文はパソコンを使ったり代筆してもらったりしても問題のないところです。

遺言者が封筒などに入れ遺言書自体を印鑑で封じた遺言書を持って、2人以上の証人を連れ公証役場に行き、証人とともに公証人の前で署名押印することで、秘密証書遺言の手続きは完了となり、遺言書は遺言者自身で保管します。
相続発生後は家庭裁判所にて検認の手続を受けなければなりません。

 秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしておけることと、遺言者の死後に、遺言書が発見されないケースを防ぐことができることできる点がメリットですが、遺言の「内容」を公証人が確認をしないので、遺言としての要件が欠けており遺言が無効となってしまうリスクがあります。

 遺言を確実に実行させるためには、「遺言書」の存在と内容は非常に重要となります。
作成した遺言が無効とならないように、法的な書式をしっかり遵守して記載し、遺されたご家族が相続問題で悩まないようにしておくことが大切です。

 上記のとおり、「エンディングノート」と「遺言書」は、『遺されるご家族のために書き残しておく必要があるもの』という点では同じ目的ですが、その内容や意味合いは大きく違います。

 2つの最も大きな違いは「エンディングノート」は書式など一切決まった形式はないので、ご自身がご家族ために書き残したいことを自由に記載しておくものですが、「遺言書」は法的に決まった形式で一定の条件を満たした形で記載しないと、その存在自体が無効になってしまう点です。

 但し、共通して言えることは「ご家族への負担軽減のために準備する」ためと、「その存在自体を、ご家族に知らせておく」ことが大切ということです。

 今回は「エンディングノートと遺言書の違い」について解説させていただきました。
終活を始めようとお考えの方は、2つの違いと共通点を理解した上で、それぞれの目的のためにご準備ください。

 終活のすすめでは、今後も最新の終活情報を配信していきますので、ぜひ定期的にご訪問いただき記事のチェックなどよろしくお願いします。
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