海洋葬のメリットとデメリットについて

墓地・霊園

 最近、お墓の継承者がいなくても安心な点や、生活様式が変化し自然回帰の意識が高まっていることから「散骨葬」を望まれる方が増えているようですが、まだ需要が増え始めて歴史も浅いことから、確固たる形式などは確立しておらず、トラブルなども少なくないようです。 


 そこで今回は、その「散骨葬」の中でも需要が高い「海洋葬」についての基礎知識や、注意点しなければならない点について解説したいと思います。

 「海洋葬」とは、火葬後のご遺骨をお墓や納骨堂などに納めず、粉末状にして海洋にご遺骨を撒く(散骨)自然葬の一種のことで、「自然に還ることが出来る」ということで、最近人気の葬送です。 

 海洋葬の散骨は個人で行ってはいけないという法律の規制はございませんが、自治体によって禁止区域などのガイドラインが決められていることがあります。
また、地域の同意を得られないなど周囲とトラブルになる可能性もありますので、散骨をされる場合は、散骨の専門業者に依頼するほうが良いでしょう。

海洋葬は、散骨の形式により、次の3つに分けられます。
個別(チャーター)散骨
一組だけ個別にチャーター船を貸し切り、船長・添乗員と同乗して散骨場所まで行き散骨をする方法です。
個別の貸切りですので、他のご家族に気にすることなく、ゆっくりと故人との最後のお別れをすることができます。
■費用の概算:20万円~40万円程度

合同散骨
2組~3組のご家族が1つの船に一緒に乗り込んで、船長・添乗員と同乗して、合同で沖合に散骨する方法です。
他のご家族と一緒の乗船となりるため日程調整などが必要になりますが、散骨するタイミングや場所は、グループごとにずらして行うなどの配慮はしていただけます。
乗船する人数が多いため、個別散骨より大き目の船でおこなうことが多いので揺れが少ないという点と、費用の面でも個別散骨より格安でおこなえます。
■費用の概算:10万円~20万円程度 

代行・委託散骨
ご遺族は乗船せずに、海洋での散骨を散骨業者に委託する方法です。
委託された散骨業者は、撮影した写真や散骨証明書を散骨後にご遺族に送付します。
個別ごとに船を出して業者が代行で散骨する「個別委託散骨」もおこなっている散骨業者もあるようです。
■費用の概算:3.5万円~10万円程度

次に海洋葬を行う際のメリットとデメリットをご紹介しましょう。

【海洋葬のメリット】
少ない費用で葬儀・納骨がおこなえる
一般葬と比べ、海洋葬は半分以下の費用で葬儀を行うことができますので、葬儀の予算が少ない方も安心です。
また、お墓の維持費などの負担も一切不要です。

ご家族・子孫に負担がかからない。
海洋葬の場合、お墓の継承者が必要ないので、お子さんがいらっしゃらない方や、もしお子様がいらっしゃったとしても「お墓を守らなければならない」といった負担の必要がないのが大きなメリットです。

葬儀と納骨が同時にできる
海洋葬は、海洋上で葬儀と散骨(納骨)を同時に行うので、一般の葬儀のような「葬儀の後にお墓に納骨」という手間が必要ありません。
仏事にお参りにいかなくてもよい
お彼岸やお盆などの仏事ごとにお墓参りに行く必要がございません。

供養(葬送)スタイルが自由
散骨する場所は、自治体などにより制限区域はあるものの、故人の思い入れのある場所を選ぶことができ、葬儀スタイルも、宗教的や儀式的ではない家族独自のアットフォームな葬送が可能です。

【海洋葬のデメリット】
お墓参りや献花が難しくなる
一般の墓のような、お墓参りの明確な印がないため、お墓参りをしてご焼香したり墓前にお花を供えることができません。

ご遺骨を移すことが出来ない
遺骨を散骨するためにパウダー状になるまで砕き海洋に散骨するため、ご遺骨は手元に残らないので後世に残すことができません。
※海洋葬をされる場合でも、ご遺骨すべてを散骨しなくてはいけない訳ではありませんので、少量のご遺骨を手元に残しアクセサリーやオブジェなどを利用して手元供養される方もおられるようです。

ご親族の理解が得られない
「海洋葬」は、ごく最近マスコミなどで取り上げられることも多くなり、多くの人に知られるようになりましたが、一般的な供養の方法と比べると、まだまだイレギュラーな葬送です。
たとえ、故人やご家族が希望していても、「お墓が無いので今後お参りできない」などの理由から、親族などの周りの人々からの理解が得られないことがあります。
海洋散骨葬はまだ歴史が浅いため、まだ認識さないことが多いため、ご本人の希望だけではなく、ご家族や親族同士が事前にしっかりと話し合いをすることが大切です。

 なお、法律上、散骨葬は「節度をもって行う」かぎり違法行為にはないとされていますが、まだ完全に法整備がなされていないため、散骨を行う方の各自のモラルによって行われているのが現状です。
特に散骨を行う場所については、適当におこなうと死体遺棄や墓地埋葬法違反に抵触したり、精神的損害や財産的損害などの民法的な賠償請求を受けたりする可能性がありますので、専門の業者に相談するか委託するなどいした方が良いでしょう。

 従来では、供養といえばお墓という選択肢がほとんどでしたが、最近、自然回帰ができることと後継者問題などの解決もできるという観点から、海洋葬という選択肢も認知されつつあります。
皆さまも、一般のお墓以外の選択肢として、海洋葬も選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。

 今回は、海洋葬のメリットとデメリットについて解説させていただきました。
皆さまの終活のお役に立てましたら幸いです。
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