遺贈についてお教えします

終活全般

 近年の日本では、高齢化社会が拡大するにつれて、終活に対する意識も高まってきており、終活を始める方も年々増加しているようです。

 終活としてやらなければならないことは、「お墓の準備」や「葬儀の準備」、「生前整理」など多種多様ですが、終活の中でもやっておきたい大切なことの一つとして挙げられるのが、「相続問題」の対応です。

 今回は、その「相続問題」の対応として、相続財産を人に与える「遺贈」にポイントを絞り、解説したいと思います。

 「遺贈」とは、被相続人(亡くなった方)が、遺言書を作成し遺言によって、無償で人(相続人)へ相続財産を与える行為のことを指します。
遺贈によって、相続財産を受け取る人のことを「受遺者(じゅいしゃ)」といいます。
受遺者は法定相続人である必要はありません。
また、被相続人が相続財産を譲りたい相手がいれば、遺言により自由に相続財産を譲り渡すことができるので、受遺者は、個人や法人を問われません。

 遺贈は、被相続人の遺言により効力が生じます。
もし、被相続人(遺言者)より先に受遺者が亡くなった場合は、その受遺者への遺贈は無効となります。
その場合、例え受遺者に相続人がいても、相続とは違い、遺贈の権利は相続されません。
もし、受遺者の相続人に遺贈した場合は、遺言の内容に『被相続人(遺言者)より先に受遺者が亡くなった場合は、受遺者の相続人へ遺贈する』などのように補足で記載しておきましょう。

 なお、遺贈は相続の場合と同様に、受遺者(遺贈を受けた者)は、遺贈を承認して受けるか、遺贈を放棄(受けないか)するかを選択することができます。

『包括遺贈』
「包括遺贈」とは、例えば「相続財産の○○%(割合)を、Aさん(遺贈される人)にあげる」といった感じに、遺贈する財産を具体的に指定せずに、相続財産の配分割合を指定して行う遺贈のことをいいます。

『特定遺贈』
「特定遺贈」とは、例えば「東京都目黒区○○1丁目×番地の土地(具体的な財産)をBさんにあげる」といった感じに、遺贈する財産を具体的に指定して行う遺贈のことをいいます。

『負担付遺贈』
「負担付遺贈」とは、例えば「高齢の妻の介護をすることを条件に財産をあげる」といったように、遺贈者が受遺者に対して何らかの義務を負担しさせて、その義務が履行されることを条件として財産の遺贈を行うことをいいます。

 負担付遺贈が行われた際に、受遺者がそのような義務を負担したくなくて遺贈は受けたくない場合は、受遺者は負担付遺贈を放棄することができます。
負担付遺贈を放棄した場合、もちろん相続財産を受けとることはできませんが、義務も果たす必要はなくなります。
その遺贈については、負担の利益を受けるべき人が、代わりに遺贈を受けることができます。
※負担付遺贈を放棄する際は、遺言者が死亡したり、自分が遺贈を受け取ることを知った「3ヵ月以内に行わなくてはいけない」という期限があるので注意が必要です。

「遺贈の際の税金について」
1、相続人以外の人へ遺贈すると、「相続税が2割増し」になりますので注意が必要です。
2、相続人以外の人へ不動産を遺贈した際の、不動産の登記をする際の登録免許税は、相続人(固定資産税評価額の0.4%)の5倍(固定資産税評価額の2%)になります。

 なお、「負担付遺贈」を行う際は、受遺者が遺言通りの義務を履行するかを見守るために、遺言執行者を指定しておくと良いでしょう。

「遺贈をするときの注意点」
 遺贈を行う際は、主に下記の点に注意しましょう。
1、受遺者が先に亡くなった場合を想定しましょう
・遺贈は、遺言者よりも受遺者が先に亡くなってしまった場合は、遺贈自体が無効になってしまいます。
そうならないために、遺言者が亡くなった時点で受遺者の方が先に死亡していたときのことを想定して、そのような事案が発生した際は、「相続財産を他の誰か(受遺者の相続人など)に引き継がせる」という内容も、遺言書に記載しておくべきです。

2、相続人の遺留分に注意が必要です。
・遺贈は、自分が亡くなった際に、誰にどのような相続財産を与えるかということについて、遺言者(故人)の意思を最大限に反映させることができます。
ただし、法定相続人については、法定相続分の1/2までの法的に定められた遺留分がありますので、この権利を侵害すると、遺贈により財産を譲り受けた受遺者に対し、法定相続人より遺留分減殺請求をされる場合があります。
そうならないために、遺言での遺贈の内容が、法定相続人の遺留分(相続財産の1/2)を侵害しないよう注意が必要です。

 また、遺贈は、遺言書で遺贈をすると相続人以外の人にも財産を残せるので、内縁の配偶者のいる方や親族のいない方、法定相続人以外の方に財産を残したい方には大きなメリットがあります。
しかし、遺贈を受けた者(受遺者)と相続人との間でトラブルになることがありますので、注意が必要です。

 なお、遺贈は、税金面で相続と違いがあるため、相続ではなく遺贈したために、相続財産を譲り受けた受遺者に税金面で負担をかけてしまうこともあります。
 上記のように、遺贈には注意しなければならない点が多々ありますので、遺贈を行う際に遺言書を作成する際は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら作成することをおススメします。

 今回は、「遺贈」について解説させていただきました。
皆さまの終活のお役に立てましたら幸いです。
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